ナンパスポットをうろうろしている女は別として、ナンパとは無縁の場所にいる女をゲットする鉄板法則は、時間をかけることだ。
一般的にナンパは即決性が高い。だがそれは「ナンパされるかもしれない」という場所に身を置く女に限った話であり、ナンパのナの字も頭にない女をターゲットにする場合、とにかく時間が必要だ。
俺が見定めたターゲットは、鳥取市の某ショッピングモールに入っているサプリメント直営店の販売員だ。年は二十代後半。ブルーを基調とした制服を着て、すらっとした体躯をしており、美人で髪も長い。店の中、あるいは少し離れた場所から観察するうちにセックスしてみたくなった。この手の女は難攻不落なものだが、ナンパしてみる価値はある。
俺が最初にやったのは種まき。すなわち男女の関係を作るための土台づくりだ。彼女が担当している時間を狙って週に三回は店を訪れ、商品を買う。その際、商品の説明や服用上の注意点などをなるべく時間をかけて聞く。店を去るときは「今日は暑いですね。夏バテしないように注意してくださいね」みたいなことを言って締める。これを繰り返すと顔を覚えられ、親近感が増す。場合によっては警戒されるかもしれないが、なるべく紳士的に振る舞うことで基本的に怪しい男でないことを意識させる。
「ビタミンBをください」
「この前買ったばかりですよね。もうなくなったんですか?」
「なくしたんです」(笑)
「くすっ! 変な人」(可愛い笑顔)
ここまで来れば通常の客と販売員の関係を確実に越えており、種まきの段階は終わり。テンションの上がった俺は次のステップに進む。
「今日、お仕事のあとご予定ありますか? 食事でもいかがですか」
「ええ・・・?」(少々苦笑い)
これは仕方ない。ナンパとは無縁の場所にいる女は必ずこの手のリアクションをする。だがここでひるんだらせっかく蒔いた種が腐ってしまう。種はちゃんと育てよう。
「この店にきたとき、そんなつもりはなかったんですが、貴女に出会ってお話するうちに、惹かれてしまいました。ごめんなさい。貴女が好きです。恋をしてしまいました。今では貴女の笑顔が僕のサプリメントです」
こんなことを言われて嬉しく思わない女はいない。ときめくような出会い。時間をかけてはぐくまれた愛。女はこの手の恋物語に弱い。
この日の会話を区切りに、二人の間には甘い空気が一気に漂った。もちろん食事をし、メアドを交換。店に行かなくても個別に会えるようになった。特定の彼氏がいるのかどうか曖昧だったが、俺を受け入れてくれた。
三度目のセックスで彼女を二回イカせ、めろめろにした。すると彼がいることを白状した。
「でもね、最近マンネリ気味なの」
俺は女の歓びを十分に与えた。今では俺の性の虜になっている。アブノーマルな体位や制服プレイなども試している。
「もう離れられないわ」
そんなことも言う。
時間をかけて手に入れた女は、なかなか離れていかない。