俺は童貞だったけど、最近出会い系で処女とセックスした。
どうやってこの幸福を得たか書いてみたい。
友人にナンパ師がいた。仕事帰りにふらりとナンパスポットに出かけていっては、手頃な女性を手に入れてどこかに消えていく。俺も何度かその刺激的なシーンを見たことがある。羨ましいと思う。俺は当時二十五歳で童貞。とにかく女に飢えていた。
「お前もやってみろよ。ナンパスポットにくる女はみんなヤリマンだぜ。三人に一人は必ず引っかかる」
でも俺は口べたで自分に自信がない。それに風貌が地味だ。ヤリマンだから引っかけやすいというが、ヤリマンだけに男のことを知り尽くしていると考えなくてはならない。そんな女達を相手に俺ごとき童貞がまともな戦いができるとは思えない。それにナンパしようとしている男は俺だけじゃないから競争が生まれる。その中で女をゲットできるとは思えない。ナンパは無理だ。
でも友人は次々と彼女を作り楽しそう。俺も彼女が欲しい。
そんなある日、世の中に「出会い系」なるものがあることを知る。無料で登録できるので試しに会員になり、女性の掲示板を見てみた。都道府県別に検索できて、地元の浜松市にも女性がいることを知る。派手な女もいるが、俺と同じように地味な女もいる。俺の中にいる男がにわかに活気づいた。
「出会い系って知ってるか? 出会い系なら俺にもできそうだ」
そう友人に言う。反対されると思ったが、意外なことにアドバイスをくれた。
「ナンパが得意じゃないことをお前の売りにしろ。出会い系の女にもそう言え。きっとお前のような男が好きだという女に出会える。そういう相手を地道に探せるのが出会い系のいいところだ。俺には向いてないがな」
文章を考えた。
「僕の性格をひとことで言うと、ナンパできない性格です。口八丁手八丁で女性を口説くのが得意ではありません。その分、女性に対しては誠実です。僕は貴女に一生懸命尽くす男になるでしょう」
嘘偽りなく掲示板に書いた。これは俺の正直な人間像だと思う。これでだめなら一生彼女なしでもいいと思った。ここは勝負だ。
驚いた。
女性からどんどんメッセージが届きだしたのだ。世に中には俺のようなタイプの男を好む女性が意外に多いのだと知る。色々調べてみると、出会い系というネットの世界では信用が一番らしい。誠実そうな男と不誠実な男が二人いたら、女はたいてい前者を選ぶという。ナンパ技術はこの世界では通用しないようだ。友人が「俺には向いていない」と言ったのも理解できる。
多くの候補者の中から、浜松市に住む二十三歳のアルバイターを選ぶ。連絡したら会ってくれることになった。年甲斐もなく飛び上がってはしゃぐ。
彼女も地味な女性だった。なかなか彼氏ができず、出会い系に思いを託したようで、俺と似たような境遇にいる女だった。相性も良く、ピュアな交際が始まる。松田聖子さんの大ヒット曲に「赤いスイトピー」という可憐な曲があるが、限りなくあの曲の世界に近い。キスやハグなんてもってのほか。交際を始めて二週間になっても手もつながない。
でも楽しかった。俺は彼女がいるという優越感に浸ったよ。心理的に満たされた日々だった。
そして出会って二ヶ月後、やっとセックスにたどりつく。「抱いてみたい」と言ったら「わかりました」と恥ずかしそうに答えた。童貞だけにセックスはぎこちなく、当然ながらうまくできなかったが、幸せだった。なぜなら彼女も処女だったから。
出会い系では自分に会った相手を嗅ぎ当てることができる。磁石のN極とS極がくっつくように、自然と機会が生まれ、重なり合う。
童貞と処女が出会ったのも、偶然ではないと俺は思う。