出会い系はセックス相手を見つける場所なのだと初めて知りました。
僕が出会い系に登録してパートナーを探そうとしたきっかけは何だったと思います? 英会話に明るい人にTOEIC試験のノウハウを教わろうと思ったのです。笑っちゃいますよね。今から思うとおかしくてしかたありません。
要は就職試験対策です。外資系に入るにはスコアが最低でも八百点は必要で、当時の僕は五百点くらいでしたから、短期間で三百点上げる必要があったのです。でも時間がないので独学ではどれだけ勉強量を増やしても無理。そこで思いついたのが出会い系。有識者からマンツーマンで習えば覚えも早いでしょうし、無料ですから学生の僕には好都合に思えました。相手はできれば年上の女性がいいと思っていました。丁寧に優しく指導してくれると期待したのです。
掲示板のタイトルはこれです。
「英会話できる人大集合!」
連絡してきたのは浦添市の旅行代理店に勤めているという三十七歳の美都子さん。顔は派手ですが聡明に見えましたし、小学校のときの音楽の先生に似ていたので親近感もあり、美都子さんを選びました。
「英会話できる人を募集なんて書いてるから外国人かと思ったわ。日本人なのね」
「美都子さんどのくらい英会話できますか?」
「アメリカ人と付き合ったことがあるわ。TOEICスコアは八百七十くらいかしら」
決まりです。すぐにでもTOEIC学習を指導して欲しいとお願いしました。
「面白い人ね。出会い系で英語を習おうなんて」
速攻で断られるかと思いましたが、感触は悪くありません。
「お願いします。短期でもいいので。とにかく時間がないんです」
頭の中には受験対策の知識を吸収することしかありません。どうしても八百点がほしいと熱弁をふるい、美都子さんの語学力を持ち上げたりして説得し、なんとかOKをもらいました。
「ありがとうございます」
これでスコア八百がとれたら、出会い系は英会話学習にオススメの学習ツールになるでしょう。そのあかつきには仲間や後輩にも教えたいと思います。
次のデートから学習会が始まりましたが、美都子さんはときどき上の空になったりして真剣味がありません。英語には詳しいですが、親身になってレクチャーしてくれません。そして三回目のデートのとき、こんなことを聞かれました。
「真面目に答えてね。君は本当に英会話を習いに出会い系に来たわけ?」
両肘をついて顎を乗せる美都子さん。
「本当ですけど、それが何か」
「へえ・・・。世の中には君みたいな人もいるのね」
「どういう意味でしょう」
すると美都子さんが顔を寄せてきて小声でこう聞いたんです。
「君はまだ童貞でしょ?」
「は、はい」
どきどきするような甘い目です。女性からそんな目で見つめられたのは初めてではないでしょうか。思わずその刺激的な視線から目をそらしました。
「ふふっ! 可愛い」
そしてまた顔を近づけてきます。
「童貞捨てたいと思わないの? 女性とエッチしたいと思わないの?」
テキストをゆっくり閉じてテーブルの上に置きました。どきどきします。ムラムラしてきます。全身が熱くなります。
女性とエッチしたいかって? したいに決まっているじゃないですか。
毎日オナニーしないと追いつかず、一日に三回出したこともあります。女性のアソコに入れてみたいと思わない日はありません。でも相手はいません。ナンパひとつしたことないまま大学四年生になってしまいました。
「私が奪ってもいいのよ。君が望むなら」
白い指。赤い唇の縦皺。セミロングの髪。香水のかおり。めまいがします。僕は英会話のことを忘れました。シャーペンが床に落ちたことにも気づきません。
「う、奪われたいです。今すぐ」
美都子さんが伝票を持って立ち上がります。僕は勃起した下半身を隠しながらバタバタと学習道具を片付けました。シャープペンを拾い上げたらトレイがひっくり返りました。
初めてのセックス。
気持ちよかったことだけ覚えています。女性の肌って、柔らかくてすべすべしているんですね。いい匂いがします。おっぱいは大きくて、乳首も大きいです。喘ぎ声もよかったです。女性器が酸っぱいということも初めて知りました。そしてペニスを女性器に挿入した瞬間、僕は意識を失いました。
その日から僕はセックスの虜になったのです。TOEIC試験や就職はどこかに飛んでいきました。
「人生にとって英語とセックス、どっちが大事だと思う? どっちが人間を幸せにすると思う?」
と美都子さん。
「セックスです。そう実感します」
「正解。今日のレッスンはこれで終わり」
出会い系って、セックス相手を見つける場所なのですね。そして幸せになる場所なのですね。
美都子さんに逆ナンパされて、とてもいい経験をしました。
セックス相手を見つけたい人に出会い系はオススメです。仲間や後輩にも教えようと思います。