僕は福岡市城南区に住むサラリーマン(既婚男性)。
出会い系で知り合った女性と東京でエッチした話をしよう。
一夜限りの関係だったが、刺激的でいい思い出になっている。
会うときは少し冷やひやしたけど、別れるときは爽やか。
そして少々センチメンタル。
やっぱり出会い系はいいなって思う。
東京に出張する一か月前、某出会い系サイトの会員になった。
久々の出張なので、東京の女性と遊んでみたいと思ったんだ。
以前も出会い系を使って宮崎や沖縄で女性と会ったけど、妻が妊娠したのを理由にやめた。
でも出張という独特な解放感。
妻以外の女性への欲望が沸々と湧き起こる。
連絡を取ったのは足立区に住む小奈美さん。二十五歳。
背が高くてショートカット。
顔の掘りも深いので、第一印象は“パリジェンヌ”だった。
彼女が指定した待ち合わせ場所は銀座コリドー街の某メキシコ料理店。
地図も添付して送ってくれた。
「ナンパスポットですけど、いいですか」
「別に構いません」
ナンパスポットでも反対する理由はないが、なぜそんなところを選んだのだろう。
少し不安ではあった。
仕事の後、現地に行く。。
確かにナンパされたい女とナンパしたい男であふれている。
先入観かもしれないけど、誰もが相手を探して楽しそうに競争してるように見える。
椅子取りゲームみたいな。
そのメキシコ料理店を見つけた。人々の隙間に小奈美らしい女性がちらちら見える。
でも、足が止まる。
「ちょっと待ってよ。何?」
思わず口走る。
小奈美が誰かと会話していたのだ。
少々アルコールが入ってそうな若い男から声をかけられている。
気取った笑みでさかんに言葉を投げつける男。
ときどき口に手のひらをあてて受け答えする小奈美。
とまどいと明るさを器用にミックスした女の顔。
嫉妬した。
胸をドキドキさせながら小奈美に近づく。
「小奈美さん。お待たせ」
「あ、こんばんは」
その瞬間、男が地面をけるようなしぐさで立ち去る。
屈辱感と優越感が入り混じった複雑な気分。
焼いた肉にチーズをかけたビステク・コン・ケソを食べながらテキーラを味わう。
でも、さっきのナンパシーンがしつこく瞼に蘇り、気まずい感じ。
小奈美はけろっとしてるが、僕は少々嫌な気分。
「なんでこんなところを待ち合わせ場所に選んだの」
「一度ナンパされてみたいって思ったんです」
「ひどいな。場合によっては他の男とデートするつもりだった?」
「そんなことない」
目をたれ目にして笑いながら、手をふる。
「もっと地味な場所がよかったな」
「たとえば?」
「東京駅地下街とか」
「両国の国技館とか?」
二人で笑う。
それから銀座を散歩し、タクシーで新宿に行って飲みなおす。
ショットバーでバーボンを飲み、最後にダイキリで乾杯。
ほどよく酔ったところで彼女をつれてホテルに戻る。
「じゃあ、ここで」
部屋の前で立ちさろうとした彼女を強引に中に入れて唇を奪う。
ハンドバッグが落ちる。
抵抗はしなかった。
つんとする香水に興奮し、抱きしめて尻をつかむ。
「抱きたい」
「地味な人だと思ってたけど、・・・なにげに強引」
「抱かせてほしい」
ベッドで絡み合う。
抱いているのは小奈美じゃない気がした。
裸にすると体が小さく感じられる。
胸も尻ももっとふくよかだった気がするが、実際はこぶり。
でも弾力があったし。乳首も固い。
乳首が勃つ、というのはこういうことなのか、と思いながら吸った。
妻の乳首はこんなに元気じゃない。
行為の終わりのほうで小奈美が激しく身をよじったら、その左手がベッドに備え付けてあったラジオのボタンにぶつかった。
とたんに軽快な曲が流れる。
射精中だったから音を消す余裕はない。
「アッああん・・・イク・・・イッちゃう」
男の最後を迎えた僕は、大きく息を吐いて小奈美の横に倒れた。
すると彼女が思いだしたように半身を起こす。
「この曲知ってるわ」
「何て曲?」
「ラストダンスは私に、かな」
曲が終わっても、小奈美はずっとその歌を口ずさんでいた。
下着を身に付けるときも、ワンピースを着るときも、髪にブラシを入れるときも、ハンドバッグを片手にさよならを言うときも。
「♪ 忘れ、ないで・・・かな? 今日はナンパしてくれてありがとう」
「ナンパ?」
「今日はコリドー街であなたにナンパされたことにする。いい?」
「いいけど」
「それじゃ、さよならね。奥さん大切にしてね」
ドアを開けて、消えていった。
後腐れがなく、爽やかだったな。
また会いたいという気持ちも湧かない。
また会ったら、今晩のデートが台無しになってしまう。
彼女も同じ思いだったに違いない。
パリジェンヌの余韻と体臭が残るベッドにあおむけに倒れた。
ラストダンスは私に。
いい歌だと思った。